2012年9月30日日曜日

[古今和歌集]紀友則・2

<紀友則・2・古今和歌集>


秋ちかう野はなりにけり白露の置ける草葉も色かはりゆく

訳・秋も近く野は変わってしまった。白い露が置いている草葉も色が衰えて変わっていくよ。(「きちかうの花」=「桔梗」が隠してある。)

2012年9月29日土曜日

[古今和歌集]紀友則・1

<紀友則・1・古今和歌集>

秋風にはつかりがねぞ聞こゆなるたがたまづさをかけて来つらむ

訳・秋風の中を初雁の鳴き声が聞こえてくるようだ。手紙を運ぶというが、誰の手紙をかけてきているのだろう。

2012年9月28日金曜日

[古今和歌集]紀貫之・4

<紀貫之・4・古今和歌集>

むすぶ手のしづくににごる山の井のあかでも人に別れぬるかな

訳・水をすくった両手からこぼれるしずくのために濁ってしまう山のわき水は、十分に飲めない。そのように、満足できずなごり惜しいのにあなたと別れてしまうよ。

2012年9月27日木曜日

[古今和歌集]紀貫之・3

<紀貫之・3・古今和歌集>

桜花散りぬる風のなごりには水なきそらに浪ぞたちける

訳・桜の花を吹き散らした風の後には、水のない空に花びらが波のように立ち騒いでいた様子が目に浮かんでくるよ。

2012年9月26日水曜日

[古今和歌集]紀貫之・2

<紀貫之・2・古今和歌集>

春日野の若菜摘みにやしろたへの袖ふりはへて人のゆくらむ

訳・春日野の若菜を摘みに、白い衣の袖を振りながらわざわざ女たちが行くのであろうか。

2012年9月25日火曜日

[古今和歌集]紀貫之・1

<紀貫之・1・古今和歌集>

袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ

訳・夏に袖も濡れて手ですくった水が、冬の間は凍っていたのを、立春の今日の風が溶かしているのだろうか。

2012年9月24日月曜日

[古今和歌集]藤原敏行

<藤原敏行・古今和歌集>

秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる

訳・秋が来たと目にははっきりと見えないけれど、風の音ではっと気づくことだ。

2012年9月23日日曜日

[古今和歌集]小野小町・4

<小野小町・4・古今和歌集>

色見えでうつろふものは世の中の人の心の花にぞありける

訳・あせていく色が見えないで変わっていくものは、世の中の人の心という花であるよ。

2012年9月22日土曜日

[古今和歌集]小野小町・3

<小野小町・3・古今和歌集>

うつつにはさもこそあらめ夢にさへ人めをもるとみるがわびしさ

訳・現実にはそうであろうけれども、夢でまでも人目をはばかって会うのは物足りない思いがすることよ。

2012年9月21日金曜日

[古今和歌集]小野小町・2

<小野小町・2・古今和歌集>

うたた寝に恋しき人を見てしより夢てふ物はたのみそめてき

訳・うたた寝の夢で恋しい人を見てからは、夢というものを頼みに思い始めたことだ。

2012年9月20日木曜日

[古今和歌集]小野小町・1

<小野小町・1・古今和歌集>

思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢としりせばさめざらましを

訳・恋しく思いながら寝たのであの人が夢に現れたのだろうか。夢だとわかっていればめざめずにいたものを。

2012年9月19日水曜日

[古今和歌集]僧正遍照

<僧正遍照・古今和歌集>

はちす葉のにごりにしまぬ心もてなにかは露を玉とあざむく

訳・蓮の葉は泥の濁りに染まらない清い心をもちながら、どうしてその上に置く露を玉のようにみせかけて人をだますのか。

2012年9月18日火曜日

[古今和歌集]在原業平・4

<在原業平・4・古今和歌集>

月やあらぬ春やむかしの春ならぬわが身ひとつはもとの身にして

訳・月は昔の月ではないのか、春は昔の春ではないのか。私の身だけはもとのままで、あたりのものはみな変わってしまったような気がするよ。

2012年9月17日月曜日

[古今和歌集]在原業平・3

<在原業平・3・古今和歌集>

名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと

訳・「都」という名をもっているなら、さあ、尋ねよう都鳥よ。都にいる私の愛する人は無事でいるかいないかと。

2012年9月16日日曜日

[古今和歌集]在原業平・2

<在原業平・2・古今和歌集>

唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ

訳・なれ親しんだ妻が都にいるので、はるばる遠くやってきた旅をしみじみ思う。

2012年9月15日土曜日

[古今和歌集]在原業平・1

<在原業平・1・古今和歌集>

世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし

訳・世の中に全く桜がなかったなら、春の人の心はのどかなものであろうに。

2012年9月14日金曜日

[古今和歌集]よみ人知らず・5

<よみ人知らず・5・古今和歌集>

世の中は何か常なる飛鳥川きのふのふちぞけふは瀬になる


訳・世の中は何が普遍だろうか。飛鳥川の機能淵だった所が今日は瀬になっているよ。

2012年9月13日木曜日

[古今和歌集]よみ人知らず・4

<よみ人知らず・4・古今和歌集>

ほととぎす鳴くやさ月のあやめ草あやめもしらぬ恋もするかな

訳・ほととぎすが鳴く五月に咲くあやめ草。そのあやめ(物事の筋道)も知らない夢中の恋をすることだよ。

2012年9月12日水曜日

[古今和歌集]よみ人知らず・3

<よみ人知らず・3・古今和歌集>

木の間よりもりくる月のかげ見れば心づくしの秋は来にけり

訳・木の間から漏れてくる月の光を見ると、あれこれ思い悩む秋が来たのだなあ。

2012年9月11日火曜日

[古今和歌集]よみ人知らず・2

<よみ人知らず・2・古今和歌集>

さつき待つ花たちばなの香をかげば昔の人の袖の香ぞする

訳・五月を待って咲く花たちばなの香をかぐと、昔親しかった人の袖の香りがするよ。

2012年9月10日月曜日

[古今和歌集]よみ人知らず・1

<よみ人知らず・1・古今和歌集>

春日野の飛火野野守出でてみよ今いくかありて若菜摘みてむ

訳・春日野の飛火野の番人よ外へ出てみなさいよ。もう幾日たてば若菜が摘めるでしょうか。

2012年9月9日日曜日

[万葉集]防人歌・4

<防人歌・4・万葉集>

防人に行くは誰が背と問う人を見るが羨しさ物思もせず

訳・防人に行くのは誰の夫かと尋ねる人を見るのはうらやましいことです。何も思いわずらいもしないで。

2012年9月8日土曜日

[万葉集]防人歌・3

<防人歌・3・万葉集>

草枕旅行く夫なが丸寝せば家なるわれは紐解くかず寝む

訳・旅する夫が服を着たままで寝るならば、家にいる私は紐をほどかずに寝よう。

2012年9月7日金曜日

[万葉集]防人歌・2

<防人歌・2・万葉集>

韓衣裾に取りつき泣く子らを置きてそ来ぬや母なしにして

訳・着物の裾に取りついて泣く子供たちを置いてやって来たよ。母親もいないのに。

2012年9月6日木曜日

[万葉集]防人歌・1

<防人歌・1・万葉集>

父母が頭かき撫で幸くあれていひし言葉ぜ忘れかねつる

訳・父母が私の頭をなでて、無事でいなさいと言った言葉を忘れることができないでいるよ。

2012年9月5日水曜日

[万葉集]東歌・3

<東歌・3・万葉集>


稲つけばかかる吾が手を今夜もか殿の若子が取りて嘆かむ

訳・稲をつくのでひびやあかぎれができる私の手を、今夜もお屋敷の若様が手に取って嘆かれるでしょうか。

2012年9月4日火曜日

[万葉集]東歌・2

<東歌・2・万葉集>

信濃道は今の墾道刈株(はりみちかりばね)に足踏ましなむ履着(くつは)けわが背

訳・信濃への道は新しく切り開いた道です。切り株に足を踏みつけなさるでしょう。くつをはいていきなさい、私の夫よ。

2012年9月3日月曜日

[万葉集]東歌・1

<東歌・1・万葉集>

多摩川に曝す手作さらさらに何そこの児のここだ愛(かな)しき

訳・多摩川でさらす手織りの布がさらさら流れるように、さらにどうしてこの娘がこんなにひどくかわいいのだろう。


2012年9月2日日曜日

[万葉集]大伴家持・5

<大伴家持・5・万葉集>

新しき年の始めの初春の今日降る雪のいや重け吉事

訳・新しい年の始めである初春の今日降る雪のようにいよいよ重なれよ、めでたい事が。

2012年9月1日土曜日

[万葉集]大伴家持・4

<大伴家持・4・万葉集>

うらうらに照れる春日に雲雀あがり情悲しも独りしおもへば

訳・のどかに照っている春の日にひばりが舞い上がり、物悲しくなってくるよ。一人で物思いにふけっていると。